夢のような夢のはなし  2.夢の構造 | 中野区鷺ノ宮から徒歩4分の精神科・心療内科

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夢のような夢のはなし

夢のような夢のはなし  2.夢の構造

夢は一般に①場面の提示、②ストーリーの展開、③クライマックス、④結末という4部構成になっている。一見「起承転結」に似ているが、「転」に当たる気の利いた要素はない。

起承転結の代表例としてよく引き合いに出される頼山陽の俗謡がある。いろんなバージョンがあるようだが、私が覚えているのは次のようなものである。

京都三条 糸屋の娘
姉は十七 妹十五
諸国大名は 弓矢で殺す
糸屋の娘は 目で殺す

人間の意識はこうした「ひねり」を好む傾向があるが、夢は無意識が作るせいか、展開はもっとシンプルである。多くの人が見る夢を例に挙げて前述の4部構成を指摘すると、①山道を歩いていたら、②崖に足を滑らせ、③転落する、④何かをつかもうとあがいているうちに空を飛んでいた、ということになる。

頼山陽の俗謡を無理やり夢に当てはめると、「京都三条糸屋の娘、姉は十七妹十五」が①場面の提示に当たり、②ストーリーの展開も、③クライマックスもなく、突然「糸屋の娘は目で殺す」という④結末が来る。こういう夢は分析できない。

夢分析において最も大切なのが①場面の提示である。芝居にたとえると幕が開いた時の情景と登場人物で、これらについて徹底的に分析する。

場所でいうとどこが舞台になっているのか、市街地なのか山の中なのか、日本なのか外国なのか、知っている場所なのか知らない場所なのか、場面は明るいのか暗いのか、明るいのは太陽が出ているからなのか電灯がついているからなのか、暗いのは夕暮れなのか明け方なのか、さらにいえば雨や雪は降っていないのか、風は吹いていないのか、何か聞こえる音はないのかというところまで、思い出せる限り思い出してもらう。

人でいうとどんな人物がいるのか、夢を見た本人はそこにいるのか、登場人物は全部で何人か、知っている人か知らない人か、男性か女性か、年齢はいくつくらいか、姿かたちや身振り口調に特徴はないか、どんな色の服を着ているのか、装飾品や持ち物に覚えがあるか、その人物は場面の右側にいるのか左側にいるのか、というようなことをできる限り明らかにする。

一見どうでもいいようなことが、分析の過程で重要なポイントになることがある。私は安溪真一先生から、分析に要する全エネルギーの半分を①場面の提示に費やしなさいと教わった。出だしでつまずいたら、正しい分析などできるはずがないからである。

ところで、もうお気づきの読者がおられるかもしれないが、④結末はしばしば省略されることがある。崖から転落して、はっとして目が覚めるような場合である。結末がない夢は本人の中ですでに解決がついているか、まだ解決がついていない場合に見るもので、後者のほうがはるかに多い。まれに崖から転落して、そのまま地面に叩きつけられ、血まみれになるという夢を見る人がいるが、こういう人は重い精神病理を抱えているので夢分析の対象にはならない。

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