夢のような夢のはなし  5.蛇と烏 | 中野区鷺ノ宮から徒歩4分の精神科・心療内科

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夢のような夢のはなし

夢のような夢のはなし  5.蛇と烏

前回書いたように、蛇は旧約聖書では悪魔の化身として登場し、古代ギリシアにおいては治癒の象徴として医神アスクレピオスの杖に巻きついている。日本の昔話では神様のお使いとして白蛇が出て来たりする。蓼食う虫も好き好きで、昨今は蛇をペットにしたがる向きもあるようだが、中には猛毒を持っているものもいるので、一般に蛇は恐れ嫌われることが多い。

人間にとって抗いがたい力を持っているものには神(もしくは悪魔)が投影されやすい。蛇が神の使いになったり悪魔の化身になったりする所以である。

ところで実際の夢となると、蛇は男根を連想させることから、男性性の象徴として現れることが多いようである。ひとくちに男性性といっても説明が難しいのだが、女性性が現実に密着した生き方、考え方を表すとすれば、その対極にあるもの、いわば抽象的な思考や論理性を表す。男性性と女性性については、いずれ章を改めて解説する。

蛇と同じように嫌われ者でありながら、象徴的に高い価値を賦与されているのが烏である。グリム童話には神の声を伝える使者として烏がしばしば登場する。古事記では神武天皇の東征を先導したのが八咫烏(やたがらす)である。天上にいる神の声は空を飛ぶ鳥にしか聞けない。なぜ鷲や鷹でなく烏なのかというと、鷲や鷹は人間界とは別に棲息しているからで、天上と人間との間を行き来して神の声を伝える使者として、烏は身近で手ごろな存在だったのであろう。

烏には(鶏もそうであるが)太陽を呼ぶ鳥という意味もある。古代人は毎朝東から日が昇り、西に沈んで行くのを見て様々なイメージを描いた。西に沈んだ太陽が夜の間に東に向かって航海をするという「夜の海の航海」を描いた絵を見ると、太陽を乗せた船の舳先に烏が停まっている。おそらく日暮れとともに巣に帰り、夜明けとともに現れる烏に太陽が結びつけられたものであろう。中国には太陽の中に三本足の烏(金烏)がいるという伝説がある。

三千世界の 烏を殺し
ぬしと朝寝が してみたい

これは高杉晋作が作った都々逸であるが、世界中の烏を殺してしまえば朝は来ないという話になっている。

蛇も烏も邪悪なイメージと神聖なイメージを担っている。後者の場合、一般に烏は天上の神の使者であり、蛇は大地の神の使者である場合が多いようである。

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