夢のような夢のはなし  15.影(その1) | 中野区鷺ノ宮から徒歩4分の精神科・心療内科

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夢のような夢のはなし

夢のような夢のはなし  15.影(その1)

影は元型のひとつで、様々な形象をとって夢の中に出てくるが、人物として出てくる場合は自分と同性、同年齢の見知らぬ人として登場することが多い。また、影は自我がペルソナ(社会的役割)を獲得する際に不要として捨て去ったものであるから、自我にとっては邪悪で不快な性質を備えていることが多い。

しかし最初から悪いイメージばかりでは気が滅入るので、今回は自我を補佐してくれる影(positive shadow)を例に挙げてみよう。以下の夢は30歳の女性が見たものである。

「私は同年齢くらいの女性と一緒に、大きなカタログのような本を見ている。見開きのページに外人女性の絵が2枚出ている。私は右ページの金髪の女性が自分だと言い、左隣にいたもうひとりの女性は左ページの黒髪の女性が自分だと言う。私は太いマジックで矢印を描き、自分だということを示そうとするが、なかなか手が動かない。思い切り引っぱると、マジックを握ったまま手が本にくっついて、手首から先がとれてしまう。びっくりして目が覚める」

一般に右は意識、左は無意識を表し、自我がよく知っているものは夢の中で右側に、知らないものは左側に出てくるから、左隣にいる同年齢くらいの女性は本人の影である。本人は金髪の女性を自分だと言い、影は黒髪の女性が自分だと言っている。

本人自身は黒髪の日本女性なのに、なぜ金髪の外人女性が自分だと言い張っているのかというと、自我同一性障害を起こしているからである。そういう自我に対して、影は本当の自分は黒髪のほうだよと教えているのである。しかし自我は影の言うことに耳を藉さず、誤った同一性に固執したために手首から先がとれてしまったという夢である。

夢は一般に①場面の提示、②ストーリーの展開、③クライマックス、④結末という四部構成になっているが、この夢には結末がない。びっくりして目が覚めた時点で夢は尻切れトンボになっている。これは夢を見た本人が自我同一性障害という問題にどう取り組めばよいのか、態度を決めかねているからである。

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