夢のような夢のはなし  24.水の夢、火の夢 | 中野区鷺ノ宮から徒歩4分の精神科・心療内科

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夢のような夢のはなし

夢のような夢のはなし  24.水の夢、火の夢

水が一般に無意識を象徴することはすでに書いた。自我が無意識と関わりを持つようになると、夢の中に水が出てくる。水は川や海のような自然物として出てくる場合もあれば、プールや温泉という人工物で出てくる場合もある。

意識の中心機能である自我と無意識との交流は、何らかの形で水の中に入る夢となって現れる。プールや温泉はその中に人が入ることを前提としているので、自我が積極的に無意識と交流を持とうとしているときに現れる。一方、誤って川や海に落ちる夢は、自我にその意図がないのに、何らかの理由で無意識と関わりを持つ羽目になったときに出てくる。

プールや温泉はおおむね安全な場所と考えてよいが、川や海は必ずしも安全とは言いがたい。したがって川や海に落ちた場合は、夢の結末がどうなるかが問題となる。溺れる夢は最悪で、自我が無意識と関わりを持つのは危険だという意味である。落ちた瞬間、はっとして目が覚めたら、まだ無意識と関わるのは時期尚早だという意味である。落ちても大事に至らず、むしろ気分よく泳いでいるような場合は、その夢をきっかけに自我と無意識との交流が深まって行くことが多い。

水の夢で最も危険なものは津波と洪水の夢である。心の中に大きな葛藤を抱え、自我がなすすべもなく立ちすくんでいるようなときに津波や洪水の夢が出てくる。津波も洪水も巨大なエネルギーを有しており、人間が太刀打ちできるような代物ではない。呑み込まれてはおしまいだから、こうしたときはさっさと逃げなければならない。うまく逃げ切れた人は健康である。逃げ切れずに呑み込まれた人は、相当深い精神病理を抱えていると思ったほうがよい。

火もまた水と同じように大きなエネルギーを有している。鉱石から金属を精錬するためには強い火力を必要とする。たかがゆで卵ひとつを作るにも火が必要となる。大は製鉄所の溶鉱炉から小は台所のコンロまで、火には素材を変容させる性質がある。火が変容のエネルギーと呼ばれる所以である。

そうした活用法がある一方、火はすべてを焼き尽くす破壊力も持っている。夢の中に火が出てきたときは、それが素材の変容を促すものか、それとも素材を破壊するものかを見極めなければならない。

製鉄所の職員を除いて溶鉱炉の夢を見る人は滅多にいないと思うが、料理をする夢はたいていの人が見ている。料理の醍醐味は一般に複数の食材を用いて火にかけ、個々の食材単独では引き出すことのできなかった味を演出するところにあるが、これは心の中にある様々な素材に変容のエネルギーを加えて新たな境地に至ろうとする思いが投影されたものである。夢に料理や台所が出てきたら、その人の心が変容しようとしているときだと思って差し支えない。

一方、火が火事や大規模な火災となって夢に出てくるときは要注意である。自分の家が火事になる夢は、その人の自我が行き場を失っているときに出てくる。大火災は津波や洪水と同じように、その人の自我が破壊の危機に瀕していることを表している。

私も自分の家が火事になっている夢を見たことがある。ところが冷静になってみると、火事といっても畳の中央が囲炉裏のように切り取られて、その中で炭が赤々と燃えているだけのことである。私はこれ幸いとそこに網をかけて焼き鳥を作るという夢だった。

以前私は津波の上でサーフィンをしている夢を報告したが、火事の最中に焼き鳥を作るというのも大いに問題ではないかと思う。読者諸氏には津波が来ても火事になっても、とりあえず逃げることをお勧めする。

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