木もれ日  11.東西南北みぎひだり | 中野区鷺ノ宮から徒歩4分の精神科・心療内科

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院長のひとりごと

木もれ日  11.東西南北みぎひだり

診療所が西武新宿線鷺宮駅の近くにあるので、私はふだん鷺宮駅を使うことが多い。最近はPASMOなどという摩訶不思議なカードができたせいで、駅の料金表を見ることはほとんどなくなったが、たまに地方から来客があると、帰りに駅まで送って乗り換えの案内をしつつ路線図で料金を確認することがある。

それは別に構わないのだが、鷺宮駅に掲げてある路線案内図はなぜか上が南になっているのである。およそ地図というものは上が北になっているものだと信じて疑わない私は、高田馬場から山手線に乗り換える客がいると、「当駅」と朱書された部分から必ず右方向へ視線を走らせることになる。高田馬場は鷺宮の東にあるからである。

ところが鷺宮駅ではなぜか高田馬場は左に書かれているので、私の視線はいつも宙に泳いでしまい、しばらく路線図を眺めているうちに漸く高田馬場を発見するという始末である。この地に開業して以来二十余年間というもの、ずっと私の視線は泳ぎ放しであった。

先日、家内にそのことを話したら「バカじゃないの」と笑われてしまった。家内によると駅の路線図は列車の進行方向に沿って作られているのだという。確かに鷺宮駅では路線図の左方向に高田馬場がある。いくら右を探しても見つからないはずだ。

東京のように四通八達した交通機関がなく、基本的に歩くか自転車に乗るしかない地方で育ったせいか、私はいつも頭の中に地図を描いて移動している。地図は当然上が北になっており、その中を動いている自分の姿が見えているわけである。こんなことはみんな同じだろうと思っていたのだが、どうやらそうでもないらしい。

地図に詳しいはずのタクシーの運転手でも、私が東西南北で指示を出すと戸惑ってしまい、右折か左折で言い直さないといけないことがしばしばある。私に「路線図の怪」を解明してくれた家内も、地図はおろか東西南北もおよそ念頭になく、直進と右折左折だけで日常生活を送っているという。これは私にとってちょっとしたカルチャーショックだった。ひょっとしたら人間は東西南北型と右左型に分けられるのかもしれない。

典型的な東西南北型人間である私は道路地図をこよなく愛していたが、時代の趨勢に押されてついにカーナビを導入した。但し地図固定式のものである。進行方向に従って画面が回転するカーナビは何だか胡散臭くて信用できないし、そもそも車にカーナビを搭載したのも単なる見栄で、実際に使うことは滅多にない。今まで通り道路地図をしっかり頭にたたき込んでおけば、カーナビなど必要ないであろう。

というと恰好よく聞こえるが、実はカーナビの操作法がいまだによくわからないのである。

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