西武新宿線 鷺ノ宮駅徒歩4分 曽根クリニック中野区鷺ノ宮から徒歩4分の精神科・心療内科、曽根クリニックのブログ

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4.入院

手術の前に抗癌剤と放射線による治療を受けることになった。期間は4週間で、このうち放射線治療は週5日、合計20日間。抗癌剤治療は最初の1週間と最後の1週間で、1日中点滴することになるため、この2週間は入院しなければならない。

入院と聞いて私は気が重くなった。妻によると私は毎晩酒を飲んで大鼾をかいているらしいのである。入院中は飲めないにしても、大鼾をかかないという保証はない。相部屋はとても無理である。

私は個室を希望した。差額ベッド代は1日で1週間分の飲み代をまかなえる額だった(涙)。

大変だったのはむしろ入院する前の準備で、診療予約の入っていた患者全員に連絡し、日程を変更しなければならなかった。その一方で近くのM先生とS先生に事情を打ち明け、休診中の急患の受け入れをお願いした。お二人とも快く引き受けて下さったので、安心して入院できたのはありがたかった。

また、いずれ手術を受けて退院したあとは今までのように診療ができなくなるだろうから、書類作成などで負担の多い生活保護の指定医療機関を辞退することにした。そのためしばらくの間は該当者全員の転院先を探して紹介状を書くことに忙殺された。

このほか癌が発見される前から入っていた予定がいくつかあり、8月22日の中野在宅ケア研究会では「夢のような夢のはなし」というタイトルで講演を行った。8月26日は医師会雑誌「新生」の座談会に出席したが、心身ともに疲弊していて、ほとんど寝ていたような状態だった。8月27日は私が主宰している「鷺宮将棋サロン」に出席。8月30日は総合防災訓練の実行委員会だったが、入院日程と重なってしまったため、これは欠席せざるを得なかった。

8月29日、私は身の回りの品と着替えをバッグに詰め込んで単身病院に乗り込んだ。妻を同伴しなかったのは、来てもらったところで何もすることがなかったからである。2、3日に一度洗濯物を取りに来てもらえばよいと思ったのだが、ナースステーションにいた看護師は一人で荷物を担いで来た私を見て一瞬怪訝そうな顔をした。熟年離婚で女房に逃げられたやもめ男に見えたのかもしれない。

案内された個室は手前に洗面台とユニットバス、奥にベッド、その脇に衣装箪笥と収納棚、冷蔵庫付サイドテーブル、テレビが並んでおり、窓際には小さなテーブルと椅子2脚が置かれていた。狭いながらも生活するには何の不便もない。

荷物の片づけをしているところへ看護師長が来て、入院中の検査と治療スケジュールのほか、院内規則について説明があった。細かい決まりがいろいろあったが、個室ではイヤホンなしでテレビを観られるし、携帯電話もかけられるので、大部屋でなくて本当によかったとつくづく思った。

病院の周囲はまだ開発中で高い建物がなく、11階の窓からの眺望はなかなかのもので、スカイツリーと東京タワーを一望することができた。明日から始まる抗癌剤と放射線治療さえなければ、シティホテルに一泊しているのと変わらない。

しかし入院患者用の病衣が届けられ、それに着替えて血液検査を受けに行くよう指示されて現実に引き戻された。さらに、ふだんならまだ診療している時刻に夕食が届いた。いつもは診療が終わったらまず一杯飲んで、食事は最後のシメなのに、である。

この数年間休肝日なしで毎晩飲んでいた私が、今日から1週間酒抜きで夕食を食べられるものかどうか、入院早々暗澹たる気持ちにさせられたのであった。

(闘病中ですが、診療は平常通り行っています)
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